■本当に大きな1勝
リオデジャネイロオリンピック大会3日目、日本の女子ラグビー界にまた1つ、新たな歴史の1ページが刻まれました。7人制ラグビー女子日本代表「サクラセブンズ」が、ケニア代表に24-0で快勝。今大会から初めて実施される7人制ラグビーで、サクラセブンズはついに初勝利を挙げることができました。
「ようやく勝つことができました。なんとか勝てて嬉しいです。本当に大きな1勝だなと思います」
笑顔いっぱいでそう語ったのは浅見敬子ヘッドコーチ(HC)。現在のチームが始動したのは東日本大震災直後の2011年3月。翌2012年に浅見HCがサクラセブンズのヘッドコーチに就任し、1000日以上にも及ぶ合宿・遠征を経てつかんだオリンピックの1勝でした。
■歯がゆい思い、こんなはずじゃないのに
流れをつかんだのは山口真理恵選手が前半1分半過ぎに決めた先制トライ。ケニアのパスコースを完全に読んでいたかのように鮮やかなインターセプトでボールを奪うと、一気にトップスピードに乗って右サイドを独走。その電光石火のアタックに会場からは大きな歓声が上がりました。
「これで行けるな、という波をつかんだ気がしました」と山口選手。4分後には今度は左サイドを駆け抜けこの試合2トライ目。後半に入っても、開始直後に右サイドから左サイドへと大きく展開する攻撃で桑井亜乃選手がトライ、5分過ぎには兼松由香選手が右サイドを駆け上がってとどめのトライを決めました。一方で守備に回っても互いにうまく連携し、ケニアを完封。オリンピック4試合目にしてサクラセブンズ本来のプレーを発揮することができました。
「これを最初からできれば良かったんですが、難しいところだったなと。自分たちのプレーができなさすぎて、やっぱりそれが選手もコーチもすごく歯がゆい思いがあったと思います。こんなんじゃないのに、って」(山口選手)
初戦のカナダ、2戦目の英国はともに格上のチームではありますが、それにしても0-45、0-40という信じられないほどの大敗を喫し、この日の1試合目だった地元ブラジル戦も10-26で敗れ3連敗。動きが硬くミスを連発……世界の大舞台での経験の少なさがサクラセブンズの良さを失わせていたと、山口選手は語ります。
しかし、遅まきながらもその“大舞台での経験”を積んだことで、本来のサクラセブンズらしさを発揮することができたケニア戦。翌8日に行われるブラジルとの9-10位決定戦に向けて大きな弾みとなったことは間違いありません。
「点も取られないで勝てたということは明日に向けてみんな自信もついたと思うし、いい入りができるのではないかと思います」(山口選手)
■コアチーム残留は悲願、「絶対に勝って終わりたい」
そして8日のブラジル戦は、ただのオリンピック順位決定戦ではなく、ワールドラグビー女子セブンズシリーズに優先的に出場できる世界トップ11カ国のコアチームに残留するためにも、何としてでも勝ちたい一戦なのです。目標としていた金メダル獲得はなりませんでしたが、まだ歴史が浅い日本の女子ラグビー界にとってオリンピック初勝利は未来へ、そして2020年東京オリンピックへと希望をつなぐ1勝であり、ブラジル戦の勝利はさらにその希望が大きくなる1勝となるでしょう。
「未来をつなげると言う意味では金メダルを取ることが一番大事でしたけど、それができなくてもワールドシリーズさえつなげれば、次の世界大会が見える。世界の舞台を味わわないと分からないことがたくさんあるので、そういう意味では次は絶対にワールドシリーズにつなげたいなと思います」
山口選手が力を込めてこう話しました。浅見HCも「コアチーム残留は悲願。次の2020年を見据えると、自分たちの実力で残ることが非常に大事だと思います」と、ブラジル戦の重要さを説きます。
「絶対に勝って終わりたい」と、まっすぐに目を見据えながら誓った山口選手。サクラセブンズの1つの集大成となる試合で、その名の通り桜満開となるオリンピック2勝目をきっと挙げてくれると期待したいです。
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