ロンドンオリンピックのレスリング女子フリースタイル63キロ級で日本女子初のオリンピック3連覇を達成した伊調馨選手と、同48キロ級で金メダルを獲得した小原日登美が9日、ロンドン中心部のジャパンハウスで会見を行い、メダル獲得の心境を語りました。
――今の心境は?
小原選手 一晩明けてオリンピックで金メダルを取れたんだなという実感が少しずつわいてきて、私一人の力では金メダルを取ることはできなったので、本当にみなさんにありがとうという気持ちと、まだ家族や主人と会っていないので、会って早く金メダルを見せたいなという気持ちです。
伊調選手 (小原)日登美先輩と一緒で、早く会場に行って(吉田)沙保里さんと浜ちゃん(浜口京子選手)の応援をしたいですし、この金メダルを一人でも多くの人に見せてあげたいなと思います。
――メダル獲得後一夜明けて、最初に思ったことを教えてください。
小原選手 金メダルを取ったんだという実感と、試合終わった後だったので体が痛くて目が覚めました。
伊調選手 自分も寝がえりを打った時に足の痛みがあって起きました。「アイシングしなきゃ」と思ったのが朝起きて一番最初に思ったことです(会場・笑)。
――小原選手は初めてのオリンピックはどんな大会でしたか?
小原選手 オリンピックは初めてでしたが「何も変わらない」と自分に言い聞かせて試合に臨みました。日本を発つ前に旦那からもメールで「オリンピックに魔物はいない」という言葉をもらって、それを思い出していつも通りという気持ちで戦えたので、落ち着いてオリンピックを戦うことができました。
――伊調選手は3回目の金メダルですが、今までとは違いますか?
伊調選手 まったく別物でした。北京が終わってこの4年というのは、自分のレスリングスタイルも変えて、生まれ変わったといえば大げさですが、そうしてこのオリンピックを迎えられたので、初めてのオリンピックという感じでした。
トータルすれば3個目の金となりますが、自分にとっては“初めての金”という気もしますし、とりあえずは金メダルを取れてよかったなと思います。
――印象に残っているお祝いの言葉はありますか?
小原選手 友人や家族から「ありがとう」という言葉をかけていただいて、自分の方こそ「ありがとう」と言いたいのですが、戦った姿を見せることによって「ありがとう」と言われたことがすごくうれしかったです。
伊調選手 (選手村に)戻ったのが夜中だったので、ほかの競技の選手などには会っていないのですが、メールで「伊調のおかげでがんばれる」という言葉がうれしかったです。
――吉田選手や浜口選手とは昨日は会えたのですか?
小原選手 部屋に戻った時に少しだけ会って「おめでとう」「明日がんばってね」という会話をしました。
伊調選手 はい。一緒にいました。
――今後の目標があったら教えてください。
小原選手 レスリングとしてはこの試合が最後と決めていたので、自分のレスリング人生に悔いはないです。自分のレスリング目標は達成したので、これから新しい人生のスタートだと思うので、目標を見つけていきたいなと思います。
伊調選手 まだ今後のことは考えられないですが、昨日試合をしてみて悪かったところを練習したいというわけではないですが、ちょっとやってみたいなと思ったり(会場・笑)。またレスリング以外の人生も歩んで行きたいとも思うし、いろんな目標を立てていきたいなと思います。
――昨日の試合はすごい気迫を感じたのですが、どういう戦略で臨んだのでしょうか?
小原選手 決勝は1ラウンドを圧倒されて取られてしまって、負けてしまうかもとよぎったのですが、監督やコーチからアドバイスを受けて気持ちを切り替えてまた立て直すことができました。2ラウンド目を取った時から絶対負けたくないという気持ちでした。一人の力では取れなかったと思うので、みんなで取った金メダルだと思います。
伊調選手 戦略というのはあまりなかったのですが、相手によって戦い方をちょっと変えたぐらいで、大きな差はありません。相手が右利きか左利きか、低いのか高いのかで、自分の技の種類を変えたという感じです。
――日本の女性選手初の3連覇という偉業なんですが、その点について思うところを教えてください。
伊調選手 思うところは特にないです(会場・笑)。偉業と言われるのですが、自分自身ではそれを達成した「やったー」という感じはしてなくて、練習をして、試合をして、その結果が3連覇ということだけなので、そこを目指してやってきたわけではなくて、形としてなったと。うれしいことはうれしいです。
――お二人は青森県民ですが、県民にメッセージをお願いします。
小原選手 震災があってから津波で被害を受けて、そこからみんな復興している中、自分はレスリングができるだけでも幸せなことなんですが、青森のみなさんに同郷の伊調選手と二人で金メダルを取る姿を見せることができて、本当によかったなと思います。
伊調選手 日登美先輩には自分が高校に進学してからずっとお世話になって、このロンドンオリンピックで二人同じ日に同じ金メダルを取ることができて、八戸市民もすごく喜んでくれてると思うし、早く青森に帰りたいなと思います。
――今後のキャリアとして、指導者など考えていることがあれば教えてください
小原選手 目標はすぐには思い浮かばないですが、私生活としては結婚しているので、歳も歳なので早くママになりたい、そういう気持ちが強いです。
伊調選手 いろんな道があると思うのですが、選手の道もあるし、指導者の道もあるし、また違った道もあると思うので、それをいろいろ探しながらいけたらいいなと思っています。
――伊調さん、「いろいろな選択肢がある」という中に4年後のリオ大会は含まれていますか?
伊調選手 満足する試合は一生ないと思うし、自分の中で4年後と決めることはないですが、練習を再開したときにやる気になれば、リオというのも考えられるのかなと思います。
――競技の枠を越えて日本の女子が強さを発揮していますが、その理由はどう考えますか?
小原選手 自分も旦那が年下なので、私生活でも強気になって……(会場・笑)。若干、尻に敷いてるかなと思うんですけど、今まで支えてもらったのでこれからは一歩下がってついていけるようにしたいなと思います。
伊調選手 自分もそれを知りたいです。これというのはあるのだろうけど、分からないですね。
――この後ロンドンで楽しみたいこと、やりたいことはありますか。
小原選手 選手村の近くに大きなショッピングモールがあるのですが、そこを通って「買い物したいな」と思いながら練習場に行っていたので、(伊調)馨とも「買い物しましょう。美味しいお酒を飲みましょう」と言っていて、今日の(吉田選手、浜口選手の)試合が終わったらみんなで行けたらいいなと思います。
伊調選手 まったく一緒です。私も買い物が大好きなので、買い物しながらお酒を飲みたいと思います。日登美先輩はすごく弱いので、最後まで付き合ってくれるかすごく心配です。
――小原選手は「ママになりたい」ということですが、お子さんにはレスリングをさせたいですか?
小原選手 女の子だったらあんまりさせたくないと思います。今、妹の子どもで甥っ子がいるのですが、甥っ子にはやらせたいなと思います。(やらせたくない理由は)やっぱり減量もありますし、レスリングは格闘技なので本当にきついと感じることがたくさんあったので、あまりそういう思いをさせたくないなと思います。もし男の子だったら、本人がやりたいと言えばやらせたいと思うのですが、強制してはやらせたくないと思います。
――大会が始まる前にそれぞれのご姉妹から手紙を受け取ったと聞きましたが、どのタイミングで読み、どう感じましたか?
伊調選手 見たタイミングは選手村について暇だなと思って、見ました。一言だけ「一緒に戦ってる」という言葉と、ツーショットの写真が1枚入っていましたが、その写真はなんでその写真を選んだのかなという、カナダにいるときの卒業証書を偉そうに持っている2人の写真なんですが、(姉の)千春らしいというか、それで私も和んだので「分かってくれてるな」と思いました。
小原選手 私は日本を発つ時の空港に向かう車中で見て、小さいころから育っていく過程の写真にメッセージが添えられていました。一番最初に『ありがとう』と書いてあって、その言葉で必ずがんばろうという気持ちになりました。
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